episode05

登呂ムラの暮らしに思いを馳せて、歌を詠む

歌人佐佐木 信綱

昭和22年(1947)8月、日本を代表する歌人の佐佐木信綱氏が発掘中の登呂遺跡を訪れました。佐佐木氏は、水田・建物の跡や出土品を見学しながら、登呂ムラの人々の暮らしを偲び、幾首も歌を残しています。これらの歌は、歌集「山と水と」の中で「登呂の幻想」と題してまとめられ、そのうちの一首は登呂遺跡の歌碑に刻まれています。

「とろをとめ 安倍をとこらが 歌垣の うた声にまじる 遠つ汐さゐ」

これは、若い男女が集まり踊り、求愛の歌を交わしていると、その声に遠く波音が聞こえてくる情景を詠んだものです。登呂遺跡の発見に魅せられたのは、佐佐木氏のような文化人だけはありません。登呂遺跡は、当時の日本人をはるかなる古代ロマンの世界へと誘い、敗戦に傷ついた多くの人々の心を癒したのです。

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