episode03

空襲による出土品の焼失を防ぐ

静岡県立図書館館長加藤 忠雄

昭和18年(1943)、弥生の集落跡発見の報を受け、住友家の当主である住友吉左衛門が軍需工場を訪れました。その時、発掘費用として住友氏から1万円もの大金を寄付していただきました。この寄付をお願いしたのが、静岡県立葵文庫図書館館長の加藤忠雄氏です。戦時下で費用捻出が難しいなか、寄付は第一次発掘調査を支える貴重な資金となりました。

昭和20年(1945)6月20日、登呂遺跡は大きな危機を迎えます。B-29爆撃137機による静岡大空襲が、静岡市の市街地を焼野原にしたのです。当時、登呂の出土品は発見地の軍需工場や県立図書館で保管されていましたが、工場の出土品は焼失。駿府城内にあった県立図書館の講堂も焼け、多くが失われてしまいました。

しかし、この大空襲の時、加藤図書館長はとっさの判断で、出土品の一部(高杯、弓、下駄、漆塗りの木片、腰掛用の木器、小形木器、角器、石器、土器等)を水槽に入れることで、焼失から出土品を守りました。 加藤氏が生命を賭けて守り通した出土品は、現在も静岡市立登呂博物館に展示されています。

水槽に入れたと思われる腰掛と高坏
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